いわゆる油には、いろんな種類の「脂肪酸」という分子が含まれる。脂肪酸は、炭素 (C) がチェーンみたいにつながっていて、長さや形によって性質が全然違います。私たちが食べる「油」は、こんな分子の集まりです。
私たちが食事で摂る油の多くは「トリグリセリド」という形をしています。1つのグリセロール(背骨)に3本の脂肪酸がつながった分子です。えごま油もこの形で、3本の脂肪酸のうちのおおよそ2本がオメガ3(α-リノレン酸)です。
えごま油に含まれる主要な5種類の脂肪酸を3D分子データで比較できます。ドラッグで回転、スクロールで拡大縮小。
「オメガ3」は、脂肪酸の種類を表す名前です。メチル基(CH₃)側から数えて最初の二重結合が3番目の炭素にある脂肪酸を指します。オメガ3脂肪酸は複数の二重結合を持つため分子が折れ曲がった形になり、この性質が細胞膜をしなやかに保つことに役立っています。オメガ3脂肪酸は血液や脳・神経の健康との関わりが多く研究されています。4種類を切り替えて形の違いを確かめてみてください。
えごま油は「体に良い」と分かっていても、酸化(劣化)しやすく、食品に添加しずらいという課題があります。そこで「えごま油を粉末にして、さらに吸収率も高めよう」としているのが我々の研究です。
γ-シクロデキストリンの実際の3D分子モデル(ファンデルワールス半径表示)
真上から — 空洞がよく見える
横から — 筒状の深さがわかる
赤 = 酸素原子 灰 = 炭素・水素原子
ブドウ糖が7〜8個、輪になったドーナツ型の分子。外側は水になじみやすく(親水性)、内側の空洞は油になじみやすい(疎水性)という二重の性質を持ちます。食品添加物として安全性も確認済み。
「包接」の仕組み — 疎水性の分子が空洞にすっぽり、または部分的に入る
赤=酸素原子 灰=炭素・水素原子 青=包み込まれる分子(ベンゼン)
油分子の「油っぽい部分」がシクロデキストリンの内側の空洞に部分的に入り込みます。これを「包接」といいます。接着剤も共有結合もなし——ぴったりサイズが合うだけで起きる現象です。抜き差しもできる可逆的な仕組みです。
腸の表面は水っぽい環境です。包接することで油が水になじみやすくなり、腸壁に近づきやすくなると考えています。しかしそれだけでなく、まだまだ明らかになっていない現象が隠れていると考えています。ラット実験では血液中のα-リノレン酸が有意に増加することが確認されています。
私たちの発見が、実際の商品へつながっていく流れです。
研究グループの知見が、島根大学発スタートアップ(SNCC)を通じて実際の商品開発へ。地元サプリメント企業とのコラボ商品も現在進行中です。大学で研究することが、こんな形で社会につながっていきます。
えごま油の脂肪酸とシクロデキストリン(分子カプセル)、いくつかの包接錯体を3Dデータで比較できます。